備後尾道 柿渋商店

瀬戸内地方で昔ながらに柿渋を手作りしています

納屋のたてこわし


もう昨年12月の出来事です。ようやく、書く元気が少し出てきたので、記録のために。

柿渋倉庫(商品詰め作業用)に使っていた納屋を、老朽化のため解体撤去しました。築約百年。私がこの母屋と一緒に「好きに使ってくださいね」とお借りしたときには、すでに少し傾いていたのですが、そのまま気にしないで使っておりました。納屋の傾いた形にあわせてはめた通路の扉などもお気に入りでした。しかし、昨年秋の台風で瓦が隣家に落ちたりして、八十歳過ぎの家主さんが、私の代で責任を持ってとり壊します、とのことで、、、

ごめんね納屋ちゃん、いままで長い間、本当にありがとうございました。土壁で夏はひんやり、冬はほの暖かく、快適に柿渋を守り続けてくれました。直してあげられなくて本当にごめんなさい。

解体が決まってから、朝夕、納屋ちゃんにご挨拶しました。見上げる窓がヒヨコの顔のように見えるその表情が悲しそうで、つらかったです。

解体作業の始まったところ。はしらが、思っていた以上にシロアリ被害にやられていました。びっくり。本当に限界までよく頑張ってくれていたんだと思いました。片付けようとずっと思いながら、結局手付かずだった二階には、まだまだたくさんのものがあり、その量にもびっくり。

納屋からは、家主さんのお父さまが作られた一貫張りでしょうか、家主さんも知らない古いものが発掘されました。薄い布も張り込んでとても丈夫にしてあります。せめて、これだけでも、直して使おうかな。何重にも紙が重ねられて、手に持ってみたときの程よい重量感、いかにも無骨な、信頼できる手応えに心ひかれます。使い捨てではない日用品の形がここにあつて、やっぱり、産業革命以降の大量生産大量廃棄、右肩上がりの資本主義経済はもう違う、もう終わり。新しい形を模索していこうと思いました。

というわけで、少し飛躍するようですが、柿渋が必要な方、物々交換もオッケーにしてみます。納屋ちゃんごめんね百年ありがとう企画。目指せ、懐かしい新しい優しい未来。脱貨幣経済、脱大量消費文明。ビバ、「腐る経済」。ご近所のかたなら野菜でも嬉しいですし、例えば、ミカンとレモンあげるから柿渋二リットルください、とか。うちの松三本の剪定してくださる方には、喜び勇んでお好きなだけ柿渋差し上げますけれども、これは難しいかな、専門職でないと難しいでしょうから、、。お代は柿渋でええよ、という奇特な職人さんがいらっしゃるでしようか、、

もちろん、柿渋は普通にお金で買って頂いても、それは来期の柿買い取り資金になるので嬉しいです。ちょっといま、お金無いけど柿渋欲しい、お金じゃなくてこれでどう?みたいな方は、お気軽にご相談ください。

利益なんて出なくても、循環して調和して、続いていければそれでよいのです。そして少しでも、柿渋を使った手仕事や、手入れされた古民家や、自然と調和した幸せな暮らしのありかたが次世代に残っていけば嬉しいと思います。

環境活動家グレタさんの言葉を借りれば、いま、私達人類は滅亡の危機にいる。それなのにあなたたち大人は、お金の話ばかりしている。永遠に続く経済成長というおとぎ話を信じている。恥を知れ。

だったかな?引用不正確ですみません。

過疎に悩む地方は、本当に滅亡の危機にいると、最近感じるようになりました。今後の20年30年で、人口が半減、あるいは七割減少などと予測されている自治体がたくさんあります。地域でも空き家がふえ、荒れた竹林や畑が目につくようになりました。うちのご近所さんも、今のお元気な70代80代のかたがもしもなくなられたあとは、、、十軒のうち、1軒か2軒しか残らない可能性が高い状況です。

なんかせにゃ。

とりあえず、今までと同じことしてたら同じことにしかならないと思うので、ちょっと違うことしてみようと思います。

過去の因を知らんと欲せばその現在の果を見よ、未来の果を知らんと欲せばその現在の因を見よ。

過去の原因を知りたいと思うなら、その現在の結果を見なさい。未来の結果を知りたいと思うなら、その現在の原因を見なさい。

毎日バタバタで大したことはなにもできず、日常生活で手一杯なのですけれども、それでも少しでも。ゼロよりは、1ミリでも2ミリでも。。なにか、バタフライ効果があるかもしれないし。

「しょぼい生活革命」、とても良いと思います。1人ずつが、無理せずに、少しずつ、できることをやってみる。そうして、歴史の水底の流れを変えていけると思います。この10年が、未来への分岐点。


kanae3 • 2020年1月8日


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