備後尾道 柿渋商店

瀬戸内地方で昔ながらに柿渋を手作りしています

晴れたら染め


晴れたら染めなくては。天気予報で数日晴れが続くときを狙って、朝からせっせと染め作業。液につけて、干すだけなのですが、長い布地だと結構重くなって大変です。シワを伸ばしながら干していきます。いつもながら、おしめかふんどしがたくさん干されているような風景になりますですね。ご近所さんが、あら、まぁまぁ、頑張っとるね、と笑って昔を思い出す風情で行き過ぎます。

きものの帯の布で、少しシミが出ているものなども染め。もみじの柄がきれいに出ました。柿渋染めすると、地模様がよく浮き出るように思います。途中から疲れて、もはや私が布を染めているのか、布が染めてほしいと私を操っているのか、よくわけのわからない主客渾然一体の状態となり忘我のうちに終了。あやしうこそものぐるおしけれ、みたいな、わけのわからない、とにかくなんだか勢いがついて止まらない、このまま流れに乗って行けるところまで行ってみよう、という狂騒状態に陥り、とにかく作業を終了して、あとは、お日様におまかせ。数日このまま干します。お天道さま、よろしくお願いいたします。10分位して、干してある布の下端にたまってきた柿渋は、手のひらで水切りします。柿渋がたまっていると、そこだけ濃く硬くなってしまうので。かといって、干す前に布をきつく絞りすぎるとしわしわになるので、ゆるく絞って、下端に柿渋がたまってきたら、そこだけ両手のひらで挟んで絞るというか、水切りするというか、そんなやり方に落ち着いてきました。ともあれ、道具を水洗いしながら、ほっと一息。やれやれ。仕事は勢いですね。それにしても毎回、柿渋染めを自分が主体的にしているのか、何かに呼ばれて受動的にさせられているのか、なんだかよくわからない不思議な感覚に陥ります。なんなんじゃろ。ま、いいですけど。

青空に柿若葉も美しい。春ですね。この天地のなかで自分も生かされていると、しみじみ感じます。


kanae3 • 2020年4月6日


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